カゲロウ
熱を帯びたアスファルトの上
その上で ミミズが干からびていた
その上で 踏み潰されたセミがバラバラになっていた
その上で ゆらゆら 揺れる陽炎
熱を帯びたアスファルトの上
その上で 冷たくなったものを
その上を 通る人々は見向きもしない
その上に 陽炎だけが揺らめいている
熱を帯びたアスファルトの上
万の人間を救う 凄腕のイシャも
熱く理想を語る 若きセイジカも
人々を教え導く 熱いキョウシも
真下に転がる 小さなものには 見向きもしない
カゲロウ が ユラメイテ いる
往来を行く人々は気にもしない するわけもない
生命の残滓が転がっているというのに、何故。
踏み潰しても 蹴り飛ばしても 気にしない
むしろ 靴についた汚れを 不快に思うのだろう
小さきものを踏みつけて それに気付かず生きていく
それが人間だというのなら なんと汚い命なのだろう
踏みつけてきたのは、虫だけですか?
陽炎の歪めた虚像に 目を奪われていませんか?
僕は無力に見つめている 踏まれる命と 踏む命を