I・F 第二話                        黒星

  初恋の相手のレティシアが、勇者である俺が倒すべき魔王だった。 その事実を頭で理解していても、身体で感じていても、納得することは出来なかった。レティが魔王だなんてことを、信じきれていないのだ。 そうして俺が沈黙していると、イリヤが俺を庇うように前へ出た。「……勇者様。私が時間を稼ぎますから、その隙に逃げてください」「イリヤ?」「勇者様はいま丸腰です。その状態で魔王と相対すれば十中八九殺されます。……だから、早く逃げてください」 険しい表情でそう言われ、俺はハッとする。確かに俺は丸腰だ。この付近に出没する魔物くらいなら素手でも倒せる。そう思ったから武器も防具も家に置いてきたのだ。 けれど、いま目の前にいるのはレティ――魔王だ。あちらに戦意があって、俺たちを襲うつもりなら、十中八九どころじゃない、確実に殺される。でも。「……っ」 納得できない気持ちを抑えて、俺は身構えた。どうやらイリヤは、自分を犠牲にして俺を逃がそうと思っているようだが、そんなことをやらせるわけにはいかない。仲間を見捨てるようなことは、できない。……戦わなきゃならないんだ、レティと。 そうやって臨戦態勢を取った俺たちを、レティはキョトンとした顔で見ていた。こちらの緊迫感とは随分と温度差のあるその様子は、余裕の表れなんだろうか。 そしてレティは、はぁ、と短くため息をついて、言った。「……野蛮だね、シスターのくせに。戦闘が行われるものだと、信じて疑わない。もうちょっと平和的になれないかな」「……は?」 野蛮代表のような存在にそう言われ、イリヤが呆然とする。想定外すぎる発言に、俺も一瞬思考が停止してしまう。「安心して、いまは争うつもりはないよ。……まだその時じゃないからね」「何を――」「だからね、ちょっと黙ってて。私は今日、リオンとお話に来ただけだから」 ――一瞬だった。 イリヤの言葉をレティが遮ったほんの一瞬。文字通りの、一回瞬きするだけの極めて短い間に、イリヤは拘束されていたのだ。「―――――――!?」「イリヤ!」 それは、無数の光輪を取り付かせて相手の自由を奪う、上級拘束魔術だった。光輪はイリヤの手足や首、果てには口にも猿轡のように取り付き、身動きどころか声すら封じている。「……これで、ゆっくり話せるね」「っ!」 魔術の天才であるメリエルですら発動に時間のかかる魔術を、ほんの一瞬で、呼吸をするような手軽さで扱うレティを見て、俺は戦慄した。これが魔王。あらゆる『魔』の頂点に君臨する存在なのだ。「……驚いた?」 レティは、とてもバツが悪そうな顔でそう言った。まるで、普通の少女みたいに。「驚いた、なんて生易しいもんじゃねぇよ」「あはは、そうだよね」 俺の言葉にレティが笑う。完全に形だけの、乾いた笑みだった。「……なんでお前なんだよ」 そんなレティに、俺は思わず訊ねていた。さっきからずっと訊きたかったことを。「なんでお前が魔王なんだよ。どうして、よりにもよって、お前なんだよ……」「……どうしてだろうね、私にも分からないよ」 でもレティは答えてくれなかった。はぐらかされたのか、それとも言葉通り本当に知らないのかは、もう表情からは読み取れない。「ねぇ、リオン。運命って残酷だよね」「……」「私は魔王になんてなるつもりはなかったのに、血筋がそれを許さなかった。人間を殺すつもりもなかったのに、立場がそれを許さなかった。だったらせめてリオンだけでも生かそうと思ったのに、……魔王と勇者っていう役目がそれを許さなかった」「だったら、やめればいいじゃないか」「うん。……本当に、やめることが出来たらよかったのにね」 そう言って、またレティは笑った。さっきのとはまたニュアンスの違う笑顔。旅をする中で、各地で、幾度となく見てきた表情だ。 それを見て、俺は力が抜けてしまった。地面に膝をついてしまう。……こんな顔のレティは見たくなかった。「運命は残酷で、すごくふざけてる。なにがあろうと必ず、私とリオンが殺しあわなきゃならないようにできてる。一時期は、それを恨んだこともあった」 もう聞きたくなかった。今すぐここから逃げ出したかった。しかし足は動いてくれないし、耳は嫌でもレティの言葉を聞き取ってしまう。 こんな、全てを諦めてしまったような顔をしたレティの言葉を。「……でもね、今はよかったって思ってるよ。私が魔王で、リオンが勇者だってこと。……それが言いたかったんだ」こいつはもう、諦めて、受け入れて、納得してしまっているのだ。自分の運命を。 話は終わりということなのか、レティは俺に背を向けた。俺は、そんなレティに声をかけることができなかった。「じゃあね、リオン。……また会おうね」 前と似たような、しかし意味合いのまったく違う言葉を残し、レティは転移魔法を用いてその場を去った。それと同時にイリヤにかかっていた拘束魔法が解かれ、彼女が自由になったのを視界の隅に捉えたが、そちらを気にする余裕などなかった。 頭の中がごちゃごちゃして鬱陶しい。全身に寒気が走っていて、震えていて、今にも倒れそうだ。死ぬほど悲しいのに、悲しすぎて、逆に涙が出てこない。 ……昔あいつが言っていた『伝えたい言葉』って、このことだったのか? 俺たちは殺しあう運命にあるって、そんなことを伝えたかったのかよ。「……なんだよそれ」             ◆  魔王と遭遇した翌日、勇者様は自室に引きこもってしまいました。 帰宅して以降、部屋から出てくることはなく、食事も丸一日とっていません。突然そうなってしまったので、皆さんは困惑していました。 私たちがどれだけ呼びかけても、返事もしません。だから当然、一緒に帰ってきた私に皆さんは質問をしてきます。 ……あの日のことは、お母様には「とても悲しいことがあった」と、グレンさんとメリエルさんには「魔王に会った」と、それだけ伝えました。詳しいことはほとんど話していません。 ……あの時の二人の会話は、そんなに軽々しく他人に話すべきではないと判断したのです。「う〜、お兄ちゃんどうしたんだろ? 魔王に会ったっていうなら、勇者としてはもっと奮い立つものじゃないの〜?」「確かにな。……イリヤ、本当に何も知らないのか?」「……はい。私が見つけた時にはもう、魔王と接触していましたから」 嘘は言っていません。話していないことはありますが、結局のところ、私は何も知らないのです。……いえ、「何も」は言い過ぎですか。『勇者様と魔王は知った仲である』 この程度は会話から推測できます。でも、本当にそれしか分からないのです。……勇者様と魔王の関係性は、私には想定も出来ませんでした。「………………」「わっ!?」 思案に集中していると、メリエルさんが私の目をじぃっと見詰めてきました。至近距離から。驚いて、思わず仰け反ってしまいます。「な、なんですか!?」「……お姉ちゃん、何か隠してない?」 疑惑の目を向けてくるメリエルさんに、私はぎくりとします。そうです、隠しています。色々なことを。 しかしこれは、勇者様のプライバシーに拘わることです。少なくとも、今は話すつもりはありません。 だから、すみませんが、ごまかさせてもらいます。「な、なんのことだか、見当もつきませんね!」 あ、ダメだ。「お姉ちゃん……」「お前、誤魔化すの下手すぎるだろう……」 二人が呆れ返ります。うぅ、無能すぎるでしょう私。それでもシスターですか……。「……隠し事、あるんだな」 グレンさんが訊ねます。もはやどう繕っても無駄なことは分かっているので、素直に頷きました。「お願い、教えてお姉ちゃん!」 メリエルさんが、普段の間延びしたものではない、真剣な口調で頼み込んできます。好奇心などではなくて、純粋に勇者様が心配なだけというのは、目を見れば分かりました。 ……そうでした。心配しているのは私だけじゃないんですよね。メリエルさんもグレンさんも、勇者様が心配なのです。 私だけが悩んでいても事態は好転しません。勇者様は出てきません。だったら相談して、一緒に解決策を見つけるのが仲間ですよね。 それに、いまさら何がプライバシーですか。もう三年近く一緒に旅してきた仲です。そんなものはありません。「……分かりました」「教えてくれるの?」「はい。正直な話、私も困っていたので……話します。全部」 私は、伝えました。知っていることを。見た限りのことを。聞いたことを。余すことなく。 私が口を開くたびに、二人は驚いた顔をしました。しかし徐々に、その表情が変化していきます。 そして私が話し終える頃には、二人して、なんというか、とても気まずそうに顔を見合わせていました。「……どうかしましたか?」「いや、うん……」「どうかしたっていうか、うん……」 何故だか二人とも歯切れが悪いです。「ともかく、これが私の知っている全てです。……何か、分かったことはありますか?」「……まぁ、あるといえばあるな」「うん、わたしも思いついた」「え、すごい、本当ですか!?」 流石は騎士と魔術師です。やっぱり頭が冴えているんですね。……いえ、それとも私が馬鹿なだけなんでしょうか。丸一日考えても一向に進展しませんでしたし。『……………………』「? どうしたんですか?」 しかし、思いついたと言った二人が、どういうわけか沈黙していました。お互いに何度も顔を見合わせて、時折こちらを、まるで気遣うように見てきます。 けれど、埒が明かないと思ったのでしょう。二人は一度大きく頷くと、真剣な、しかしどこか遠慮した様子で私に向き合いました。「イリヤ」「は、はい」「聞いて、後悔はしないか?」「? はい、しませんが」 後悔という単語に首を傾げつつ、私は返事をします。途端にグレンさんの表情に不安が現れたのが、少し不思議でした。「お姉ちゃん、私たち今からすっごく辛くなること言うんだよ? 本当にいいの?」「……何かは分かりませんが、私の辛さなんて、勇者様のそれには及ばないでしょう」「……あ〜。こんなお姉ちゃんだから、思いつかなかったのかな……」 何かに納得した様子のメリエルさんが、小さくため息をつきます。「あの、それで思いついたことというのは……」「……ああ、今話す」 グレンさんは少しだけ躊躇する素振りを見せたあと、こう切り出しました。「俺とメリエルが思いついたことっていうのは、リオンが引きこもってしまった理由のことだ」「理由?」「そう、理由。あくまで推測だが、かなり真実に近いと思う」 話しているうちに、顔色が段々と悪くなっていきます。それが、さきほどまでの私への遠慮が原因なのは明らかでした。 それでも、グレンさんは口にしました。「リオンと魔王は、知った仲なんて程度の浅い関係じゃない。かなり親密な間柄だったんだろう。どういった間柄なのかまでは流石に推測できないが、たとえどんな仲であったにせよ、ひとつだけはっきりしているのは――」 ……私にとっては、残酷極まりない言葉を。「――リオンが魔王のことを好きだってことだ」             

◆  グレンさんの推測を聞いてすぐに、私は勇者様の自室を訪れました。といっても、扉は閉ざされたままで入ることは出来ないので、実際の場所は廊下ですが。「勇者様」 扉越しに呼び掛けますが、やはり反応はありません。魔力反応から生きていることだけは分かりますが、起きているのか眠っているのかすら判別できません。 しかし、構いません。私は今回、お話しするためにここへ来たわけではありませんから。「……返事がないのなら仕方がありません、一人で喋ります。……聞こえているのなら、せめて聞いていてください」 私は扉に背中からもたれかかり、だらしなく手足を投げ出して座り込みました。床の冷たさが直接感じられます。そして、私はぽつりと、それを口にしました。「勇者様は、魔王を慕っていらしたんですね」 ガタンと、部屋の中から大きな物音がしました。何かにぶつかって倒したような音。それにより、勇者様が起きていることが判明しましたが、それよりもまず、はっきりしたことがありました。 つまり、グレンさんの推測は当たっていたということなのです。 胸がずきんと痛みます。聞いた時点でも相当なものでしたが、こうして確定すると、一層ダメージがありました。 私は勇者様が好きで、しかし勇者様は魔王が好き。早い話、私は失恋したのです。「…………っ」 泣きそうになってしまいます。すぐにこんな風になってしまうのだから、話すのを躊躇したくなる気持ちも理解できました。 嗚咽を必死に抑えます。すると、部屋の中から小さな物音がしました。床を踏みしめるような、そんな物音。それに注意を向けていると、私は想定外の音を聞き取りました。『……なんで、そう思った?』 勇者様の声でした。 扉越しでくぐもっていますが、確かに勇者様の声です。「勇者様……!」『……いいから、答えてくれ。どうして、そう思ったんだ?』「あ、え、えーと……」勇者様が催促します。そうですね、感動している場合ではないです。「その、みんなで話し合った結果、勇者様が引き……ふさぎ込んでしまったのは、その、す、好きな人が、魔王だったからじゃないか、って結論に至ったんです」『……そうか』 そうやって短く反応して、勇者様はまた沈黙してしまいました。ああ、これで終わりかなと思いましたが、どうやらそうではないようでした。 がちゃりと、扉の鍵が開いたのです。「!?」「入ってくれ」 僅かに開いた扉の隙間から、勇者様がそう促します。突然のことだったので、私はほとんど反射的に、慌てて部屋に入りました。「悪いな、散らかってて。そこ使ってくれ」 日用品が転がっていて若干汚い床に比べ、比較的綺麗なベッドに案内されます。……普段ならきっと、ものすごく舞い上がってしまう事態なのに、あまり心が動きません。ちなみに、勇者様は立ったままです。床や、私と一緒にベッドに座ることに抵抗があるようでした。「……お前がさっき言ったことな、合ってるよ。正解だ」 私がそわそわしていると、勇者様はそう切り出しました。明確に口にしたわけではありませんが、肯定したのです、魔王が好きだと。……やはり、本人の口から語られる方がダメージありますね。「そう、ですか……」「……ああ」 勇者様は私に背を向けます。きっと顔を見られたくないのでしょうが、もう遅いです。悲しそうな表情、見てしまいました。 泣きたいはずなのに泣けない、一番辛そうな表情。旅をする中で散々見てきた、絶望しきった人の、私が最も嫌いな顔。 そんな顔をする勇者様を、私は放っておくことが出来なくて。 思わず、背中から抱きついてしまいました。 勇者様が驚いているのが、背中越しに伝わります。抱きついた後に凄まじいほどの羞恥心が襲ってきましたが、もう引けません。 私は、あなたにそんな顔をしてほしくないのです。だから、「……いまここで、全部吐き出してください」「………………」「受け止めます、全部。愚痴でも、泣き言でも。私はシスターですから、そういうのには慣れているんですよ?」「…………っ」「それに、私たちは仲間じゃないですか。悩みや相談事は存分に打ち明けてくれていいんですよ?」 あ、これは私が言えた義理ではないですけれど。「……っ!」 勇者様の肩が震えています。力は抜けてしまっているらしく、私の腕に支えられてようやく立っていられるようでした。これは流石に疲れるので、床に座らせます。 勇者様は、泣いていました。感情と涙が、堰を切ったように溢れているようでした。 きっと本当は、あの時からずっと泣きたかったんでしょう。でも色々なものが邪魔をして、そんな暇もなくなって、ため込んでしまったのです。 私は子供をあやすように、勇者様とただただ一緒にいました。ため込んだものをすべて吐き出して、落ち着くまで。 その際に、勇者様の思い出も嗚咽交じりに語られましたが、それは、いまはいいでしょう。 結局、三時間くらい勇者様は泣き続けました。それはもう、子供のように。 あまりにもみっともなく泣きすぎたものだから、今は羞恥心から布団の中に引きこもっていました。「忘れてくれ」「いえ、ちょっと無理かなーって」「くそ……どんだけ泣くんだよ俺、子供の時以来だぞ」「子供の時のどのエピソードなんでしょうか……?」「そういうのも含めて忘れろよもう!」 勇者様が声を荒げます。それは、普段通りの勇者様でした。「……ごめんな、こんなことに付き合わせて」 数分の沈黙が流れたあと、ふと勇者様が謝罪してきました。こんなこと、というのは泣きまくったことについてなんでしょう。「気にしなくてもいいですよ。私が勝手にやっただけですし」「いや、でもさぁ……」 私がそう言っても、勇者様は依然、申し訳なさそうにしていました。なので、少し頭を叩かせてもらいます。「……な、なにすんの?」「聞き分けのない子供を戒めているんです」「子供って……俺の方が年上だろ」「そんなことはどうでもいいんです」 子供扱いされて少し拗ねている勇者様に、私は言います。「いいですか、私は頼られたんです。それを嬉しいって思っているんです。謝られたら何か損した気分になるんです。……だから、ここは謝る場面じゃないんですよ」「……ありがとう?」「そうです、よく出来ました」「また子供扱い……」「まぁ、今のはわざとです」 そういった軽いやり取りをして、お互いに笑います。その時ふと、部屋の外から声が聞こえることに気が付きました。この声は……。「まったく……」 勇者様も気付いたようで、布団に包まった状態のまま、のそのそと歩き、扉を開けます。そこには目を丸くしたグレンさんとメリエルさんがいました。「お、お兄ちゃん」「り、リオン、もう大丈夫なのか?」 驚きすぎたのか嬉しすぎたのか、普段の軽快なトークはなりを潜め、ただ純粋に心配しています。「……うん、もう平気だ」「ほ、本当か? 強がりじゃないよな?」「無理はしなくていいんだよ? 辛かったら言ってくれてもいいし……」 勇者様が自分で大丈夫って言っているのにあの二人ったら……。でも、その心配が嬉しいんでしょう。勇者様は朗らかに笑いました。「いや本当、いい仲間を持ったな、俺」             

◆  村での休暇は一週間の予定で、これが最後の休暇でした。この村を出れば私たちは元の勇者パーティ。魔王を討伐する部隊に戻ります。 それは魔王──レティシアと戦いに行くということで、私としてはそれが一番の心配事でした。 勇者様は、戦えるのかと。 あの時泣きながら話していた思い出話に、勇者として見出だされた頃の話が混ざっていました。『レティシアが平和に暮らせる世界を作りたい』 それが動機で、勇者になる決意を固めたと。 ……その動機と、勇者としての終着点は、ひどく矛盾しています。皮肉と言ってもいいです。だって、その世界を作ろうとしたら、肝心のレティシアを殺さないといけないのですから。 だからそれが、心配でした。けれど、「ちゃんと戦うよ、レティシアと」 勇者様は吹っ切れた様子でそう宣言しました。昔の愛称を使わず、フルネームで呼ぶという辺りにも覚悟が見て取れます。「……本当にいいの?」「いいよ、もう決めたんだ。……ちょっとムカついてることがあるしな」「ムカついてること?」 決戦に向かう動機としてはあまり似つかわしくないその感情に、私たちは首を傾げました。「ああ、ムカついてる。アイツ、俺に何の相談もなしに、運命だからとかなんとか言って勝手に諦めやがったんだぞ? そんなもの納得できるか」「はは、お前らしい動機だな。……まぁ、それくらい軽い方が、気分も楽だよな」思わず笑いが込み上げてきます。これから世界の命運を分ける戦いに向かうというのにこの和やかさ。これこそが私たちです。「じゃあ、行きましょうか?」「ああ。……レティシアぶん殴って、世界を救ってやる」    

                                続く

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