アレグラメリー
蟲音
「私メリーさん、今近くの駅にいるの」
俺は今まで生きてきた中で、全力で走っていた。
小学校の時の運動会よりも、学校に遅刻しそうになってる時よりも、なぜなら命にかかわるからだ。
俺の住んでる町では今不可解な事件が多発していた。人が次々と消えていってるのだ。連続失踪事件として警察は追っているが、マスコミはこれをこう呼んでいた。
「メリーさん事件」
消えた人たちには共通点があった。それは何日かにわたりメリーさんと称される宛先からメールが来ることだった。
最初は少し遠くのほうにいるという内容から始まり、段々と距離が縮んでいく。最後はあなたの後ろにいるというメールが届いて…受取人は消える。
そんなメールが五日前に俺のもとにも届いた。名前は沢渡かずき。
噂の類やオカルトは信じていない方だと思っていたが、当事者になると話は別だ。
俺は近くにある花畑に到着した。ここなら周りを見渡せて、仮にメリーさんが来ても対処ができると思ったからだ。
しずかな花畑に男が一人、大真面目に命の心配をしている図はなかなかにあほらしい。
静まり返った空間の中、携帯電話のバイブ音が響く。携帯電話を開いて文を読もうとすると後ろから声がした。
「私メリー…」
いつのまにか後ろには見知らぬ人が立っていた。
後ろを向けない。足は震え、歯はガチガチと上下でぶつかり合い音が響く。
高い女の子の声が耳元でささやかれる。
心臓が破裂しそうになりながら俺は心して聞いた。
「今あなたのハックション!」
…聞こえたのはくしゃみでした。
「……ずるずる」
鼻をすすりながら後ろの少女は俺の首に手をかけた。そして…
「ポケットティッシュ持ってない?」
ポケットに入ってたティッシュを渡した。
なにこれ…
「ありがと」
使い切ったポケットティッシュを渡され彼女は咳払いをして言った。
「改めまして…私メリー」
「改めんでいいわ!」
肘を後ろに全力で引いて後ろの少女の腹にクリティカルヒットさせた。具体的に言うと胸の骨の間、つまりは鳩尾っすね。
「いったーい!女の子に何すんのよこのクソ童貞!」
「どどどど、童貞ちゃうわ!」
「大体今からあんた死ぬんだから抵抗なんてしてんじゃないわよこのニート!」
「学生だから違いまーす、前年でしたばーかばーか!大体誰なんだよお前は?」
「メリーって自己紹介したじゃないもう忘れたの?頭悪いわねあんた、そんなんだから窓際族になるのよ」
「名前なんざ聞いてねぇよ!お前が何者か聞いてんだよ性悪女!」
背中を向けたまま喧嘩なう。なんでしょうこれ?
「誰が性悪よこのゴリラ大使!そんなんだから彼女ができない歴=年齢なのよ!」
「お前俺のプライバシーどこまで知ってんだよ!やかましいわ!」
まぁかくかくしかじかありまして
「ハァ…ハァ…」
「ぜぇ…ぜぇ…」
お互い疲れたので喧嘩終了。長い戦いでした。ちなに俺のライフはもうゼロよ
俺は精神的に傷つけられて泣きながら、メリーさんは花粉で泣きながら落ち着いて話し出した。
最近起こっている事件はこのメリーさんのせいらしい。理由は存在を保つため。いわゆる食事だそうだ。
「ちょっとあんたティッシュ」
「…」
人間は地球上でもっとも強い生物だ、どんな「ちょっと聞いてるの?」て基本的に食べられない。だか「ねぇってば」た。俺たちも生命のサイクルに含「ちょっどはなみどぅが…」
響き渡る鼻をかむ音、べたべたになる俺のお気に入りのシャツ。うわーきたなーい。
「何しやがるこの鼻水メリー!いい加減にしないと…」
俺は振り返って怒鳴ろうとしたその時だった。
「あ」
花畑に一人で少女は立っていた。
「振り返ったら死んじゃうのよね〜…ははは、ドンマイ」
鼻水を垂らしながら少女はその場を後にした。
誰もいない公園にくしゃみがひびく。