俺と黒猫のファンタジ

                           ナツメ

  

 この世界に来てどれくらいの時間がたっただろう。

 俺は元々この世界の住人ではなく、科学が発展した地球というところにいた。だけど訳あってこっちの世界にくることになった。

 この物語は、俺と、ある一匹の黒猫が起こす、異世界での体験談を書きしるしたものだ。


 


 

  ◆プロローグT もうひとつの世界◆

 

 暑い……。都会の夏というものは車やビル、人口によって、とてつもない暑さをほこる。俺、黒沢 昂が毎年この時期に思うことが、体を一気に冷やす機械や、魔法などがあればすごくいいと思う。

いや、むしろ夏を消してしま……。はぁ、もう馬鹿なこと考えるのをやめて早く大学へ向かおう。

 今日は大学で、教員採用試験に向けての夏期講習がある。俺は中学時代の恩師に憧れて国語の教師を目指している大学二回生だ。勉強を始めるには少し早くも感じるが、準備は早めにしたほうがいいだろう。

 時間は少しギリギリだな……。急げば間に合うが、ここは余裕をもって裏道を使って行こうかな。

 俺は道を右折し、裏道へと入った。

 この道を通って大学へ向かうの久しぶりだな……。一回生の時にテストの日で遅刻した以来かな? 

確かあの時、何かを助けていて遅刻したんだったよなぁ。何を助けてたんだっけ。

まぁ、そんなことはいいから急ぐか。俺は狭い一本道を走り出す。

「ん?」

 走っていると、違和感を感じた。

「なんだ……。ここ、こんなに猫がいたか?」

 ここはあまり通らないから分からないけど、道の端には先ほどから猫が何匹も寝転んでいる。

 猫は異世界を自由に行き来できると聞いたことがあるけど……。

 違和感はそれだけではない。

裏道に入ってから五分は経過しているが、出口が見えない。こんなに、長かったか? それにこの景色さっきも見なかったか? これは絶対におかしい。

引き返そうと後ろに体を向けるが、そちらも出口が見えない。

「ど、どうなってるんだ……」

 あまりの急展開に唖然としていると、奥の方から黒いナニかが現れた。それは煙の集合体のようなものだったが、謎のソレは大きくなりこちらに近づき始めた。

「おいおい、まじかよ」 

あれが何か分からない。けど、俺の五感、すべてが逃げろと訴えている。

体を戻し、前に進もうとしたが、前方からも同じく黒いソレが現れる。

 徐々に奥から光が呑まれていく。 このままでは、俺も……。

 早く逃げないと。だが、どこへ?

壁は高い。道は一本道で両端には暗闇が待っている。逃げ場なんてどこにもなかった。

「こんなところで……終わるのか。まだあの人に追いつけてすらいないのに。こんなところで」

 闇が俺に迫る。

 打つ手なしかと拳を握りしめていると、目の前に一匹の黒猫が間抜けな鳴き声と共に現れる。

 そいつの瞳はとても怪しげに輝いていて、首には赤いリボンが結ばれている。黒猫は不運を運んでくると言うが、今の俺にこれ以上の不運などない。むしろ金色の瞳がこの状況を変えてくれる希望にさえみえた。俺は藁にすがるような思いで叫んだ。

「なぁ黒猫。この状況をどうにかしてくれないか!」

 だが、大声と同時に黒猫はその場から急に消えてしまう。

「あぁ……。まぁ、アニメやゲームみたいに、うまくいくわけがないよな……」

 そんなことをしている間にも、闇はすぐそこまで迫っている。

 もう駄目だ……。ここで終わるんだ。俺は夢を叶えることも、大切な人を護りきるという夢を叶えることもなく終わってしまう。

 悔しげにナニかをにらみつけていると、目の前に先ほどの黒猫が現れた。

『急に大声をだすから、驚いただろうがぁ!』

「ね、猫が喋った!?」 

 そしてその黒猫の体から、目の前の闇とは違う別の漆黒の闇が現れ、俺はその闇に呑みこまれ、意識が途絶えた。


 

 ん……。ここは……?

 あれからどうなったのかは分からない。ただ、ここが裏道ではないということが、周囲の土の匂いからわかる。

 目を開けるとそこには空があった。だが、その空は俺の知っているものではなく、月が二つ浮かんでいた。また、地面は暗く冷たいコンクリートではなく、土と芝生で、さわやかな風が頬を撫でている。温度もそこまで暑くない。身体を起こすと、そこには大自然が広がっていた。

「まるで、ファンタジーの世界に来たみたいだな」

 小さく呟くと、背後から大きな罵声が飛んでくる。

『ようやく起きたか! 異世界へ飛んだというのに呑気な奴だな!』

 振り返ると、そこにはあの黒猫がいた。首にリボンを付け尻尾をゆったりと躍らせている。

「やっぱりお前……、喋ったんだな」

『ん? あまり驚いた様子がないみたいだな』

確かにこの状況はおかしい。勉強や恋愛まっしぐらの大学二回生が大草原で黒猫と話をしているのだから。

「うん。多分、勉強に疲れゲーム脳の頭がこんな妄想を作ったのかなと思うから。時間が経てば覚めるだろうし、そういう事ならのんびり過ごさせてもらおうかなーって」

『アンタ……。勘違いしているようだから教えてあげるけど、これは現実だよ』

現実? これが……? だが、確かにこの感覚。夢や妄想にしては出来すぎているし、俺の意識もしっかりしている。

まさか、この黒猫が言うとおり俺は……。

「確か暗闇があって……。お前と出会って……。そもそも、ここはどこなんだ?」

『ここは、アンタの住んでいた科学や文明が進化した世界ではない。この世界の名は天球。アンタの住んでいた地球ってとことは双子の星さ』

「天……球? 急に言われて全然理解できないんだけど、状況を見る限り多分本当のことなんだろうな」

『理解が早いな』

まぁあんまり信用してないけどな。なぁ黒猫、俺の前にいたあの黒いのはなんだったんだ?」

あれの名は、混沌。人間を別世界に迷い込ませる存在だね

 混沌か……。それじゃあ黒猫も似たような存在なのかな?

「お前もその一種なのか?」

『あんなのと一緒にするなぁ! 私は地球と天球を行き来できる可愛い黒猫、「マル」だ!』

マルだ!って言われてもなぁ……。

さぁ、アンタ! いくぞ!

 黒猫は急に大草原を走り出した。

「ちょ! どこ行くんだよ!」

黒猫は俺の声を無視しどんどん進んでいく。

仕方なく走り出すと、心地よい風が前髪を揺らす。

「俺にも、お前と同じようにノ・ボ・ルって名前があるんだよ!」

俺の声は、風と共にどこか遠いところへ運ばれていった。

               

o Be Continued


 


 


 


 


 


 


 


 


 

あとがき

 

ここまでありがとうございます。一日前に作品2つをボツにしてファンタジーを書いてみたくて書き始めたナツメです。

 続き物はめんどくさい。と聞いていたのですが、どうしても一度ファンタジーを書きたくチャレンジしましたが、中々進まないものですね……。ある程度流れや設定が決まっていますが難しい。言葉や表現を考えるのにものすごく苦労しますし(1ページ半で)。夏休みの間にある程度書けたらいいなと思っているのですが……←

 後、今回はプロローグで次から本編が始まる予定です。なので、ページ数が一気に上がると思います(次大祭号だしこれを書くか迷いますけどね)。一応、次かその次くらいには完成させたいと思ってます。

 ファンタジーでいつも思うのが読むのも書くのも、始めと終わり近くは本当にワクワクするなぁ!と思います。それまでの道筋も好きですが、やっぱりしめは安定のワクワク感を運んでくれると思います。それはどの小説にも言えたことですけどね。

 でも僕の中ではファンタジーは他のジャンルの中で一番胸を熱くさせられるジャンルですね。うーん、あとがきが本編いこうかな……思ったけど疲ry)←

それでは、また。


 

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