ソードマスター真
青年
荒廃化した街の中に二人の剣を持った男がいた。一人の男が目にも留まらぬ剣さばきで男を圧倒していた。
「もう諦めろ。お前の負けだ。」
「……フフフ、フーッハッハハハ」
追い詰められた男は不気味に笑いながら、よろよろと立ちあがった。
「俺に本気を出させた奴はお前が初めてだ……。いま、見せよう俺の真の力を!」
男は剣を空に掲げると、男の周囲が煙で包まれた。
いったい何が始まるんだ?
そう思った矢先―――
――――カラーン。
何かが落ちた音がした。
すると、急に煙が晴れ、中には男の姿がなく――
あるのは剣だけしか残っていなかった。
「何…だと…」
いったい奴はどこに行った? こういうときにはよくて3パターンしかない
1つは空中――いない。
2つ目は地中――――出てこない。
3つめ目、俺の後ろに―――立っていない。
どういうことだってばよ……
俺は考えるのをやめた。―――瞬間
「なんじゃこりゃああああああ!!」
「なっ?」
突然の叫びに心臓が止まるかと思った。
声がしたほうに眼を向けてみると、先ほど男が手にしていた剣があった。
「俺が―――剣になってやがる?」
「は?」
あまりのことに頭が追いつかない。だが、それは男も同じのようである。
「あ……ありのまま今、起こった事を話すぜ……
な……何を言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった。」
いやお前が勝手にやったんだろ
はぁ……。珍しくこの男「立花」が
「真剣に勝負しようぜ!」
と、いつになく真剣で申し込んできたもんだから勝負を受けてやったのに……どうしてこうなった。
「頼む真!俺を元に戻してくれ!」
「どさくさに紛れて俺のファーストネームを呼ぶな!」
俺は自分の名前にコンプレックスを持っている。なぜなら誰も「まこと」と呼ばずに「しん」と呼ぶからだ。仕舞いには「しんちゃん」と呼ばれる始末。俺は尻振り少年じゃないぞ。以来、自分の名前が嫌いでしょうがない。
「……第一、治癒使いじゃないから無理」
「マジですか……」
この世界には魔法使いはいるが、治癒使いの数は少なく希少扱いされている。風の噂で聞いた話だと治癒使いの村がどこかにあるとかどうとか。
「お前を治すには、どこにあるのかも分からない治癒使いの村に行くしかない。それでも行くのか?」
真はそう立花に尋ねると
「治るならどこまでも行くさ。」
あっさり答えやがつた。妙に聞き分けが良い奴だな。でも……
「お前のそういうとこ嫌いじゃないよ俺。」
「……大丈夫か。真?頭でも打ったんじゃねぇの?」
「うるさい!褒めてやったんだから少しは喜べ!」
「はぁ?何か今日のお前ちょっと変だぞ。」
剣の姿になったお前がいえた台詞かよ……
「……元々はお前を本気にさせてしまった俺が悪いしな。付き合ってやるよ。」
「当然!最後まで付き合ってもらうぜ!」
……こんなのが一緒だと思うと心底疲れるな。
俺は落ちていた剣を拾い上げ、殺風景な街をゆっくりと歩みだした。
おれは剣の力を魔力で底上げしようと思ったら、俺が剣になっていた。