魔法皇女プリンセス☆サリア りたーんず!

池田 風太郎  

 

 お久しぶりです。または、初めまして。後者の方の方が多そうなのでまずは自己紹介と、軽い経緯(いきさつ)をお話ししましょう。なお、『りたーんず!』などと謳っていますが、前作を読まなくても話がわかるように書いている……という天の声がたったいま聞こえてきたので、初めての方もご安心ください。前作が気になる方はこちら(http://ohtanibungei.web.fc2.com/works/2010/ikedafuutarou/mahou.koujo.princess.saria.html)へどうぞ。

 さて、話を戻しましょう。ボクは妖精のケーア。妖精の世界『リペルラッド』からこの『マルテスタ』という人間の世界にやってきました。その目的は、この世界の人間と契約を交わし、その者を正義の魔法少女≠ニして育て上げ、この世界に蔓延(はびこ)る悪を駆逐することです。ことでした。ところが、平和で治世も行き届いたこの世界には倒すべき強大な悪が存在せず、結果としてボクの目的は達成不可能ということになってしまったのです。秘密結社だとか魔王だとか、そんな奴らが出てきて国民を苦しめてくれれば仕事も増えるのに……おっと失言でした。

 いくら平和だからといって、おいそれと廃業するわけにもいきません。リペルラッドにはとある存在≠ニいう伝説的な妖精の話が語り継がれていて、魔法少女と共に巨悪と立ち向かう構図は彼が始祖であると言われています。ボクの憧れであり、目標です。悪が存在しないならば、せめて困った人を救いたい。これが現在のボク、そして相棒(パートナー)のサリアの行動理念です。

 サリアについても、少しお話しした方が良さそうですね。僕と契約し魔法少女となった彼女は、この『マルテスタ』を代々治める皇帝家が第一皇女であり、次代の統治者となる身です。頭脳も容姿(※重要)も高い水準にあり、気品と行動力を併せ持つ、非常に優れた人物です。しかしその身の上から独特の悩みや事情を抱えており、そういった面では年相応の少女らしさも見える、そんな人物でもありました。

 ボクら妖精には種族があり、それぞれ使える能力が異なります。炎を起こす者は『火の妖精』、水を操る者は『水の妖精』といった具合です。ボクら『補助妖精』は『リペルラッド』では何の能力も発揮できませんが、異世界では自身ではなく他者が不思議な力を操れるようにする、という力があります。これが契約≠ニ呼ばれる行為であり、魔法少女とはこの契約により力を手にした少女のことです。ちなみに、契約自体は少女でなくても年齢性別関わらず可能ですが、まず行われません。ちょっとした補助妖精間の慣習のようなもので、『そういうもの』であると思って頂ければ良いと思います。

 さて、前置きが随分長くなってしまったが、いよいよ本題です。今回は魔法少女としての初陣を無事(?)終えてからおよそ三ヶ月が経ち、少し精神的に成長した……のかも知れない、サリアのお話です。

 

*****

 

「はぁ―……」

 深いため息が一つ、夕映えの空に消えていきました。その主は、風吹く露台(テラス)の手すりにちょこんと乗っかっている、このボク。ため息の原因は、すぐ隣で塞ぎ込んでいる少女(サリア)にありました。

 ――数刻前。

「まったく、お前はどうしていつもいつもこうなんだ! こんな事は帝政始まって以来、前代未聞だぞ!!

 露台(テラス)にはボクとサリアに加え、激高の様を見せるもう一人の人物が存在していました。目に付く特徴といえば、厳格な顔つき、風格漂う長い(あご)(ひげ)、そして高貴な衣装。威厳に溢れたその男性こそ、サリアの父君であり、この『マルテスタ』全土を統治する現皇帝・マデラ?世でした。

 厳格ながら理路整然とした考えを持ち、臣下や民の信頼も厚い名君たる彼がここまで感情任せに声を荒げるのは珍しいことでした。ですが(サリア)もその剣幕に圧される事なくなく、反論を続けています。

「あんまりではありませんか、父上! (わたくし)はヨシュア殿を喜ばせようとわざわざ昨晩からあの仕掛けを用意しておいたのですわよ。仕掛けは寸分の狂いもありません。事実、他の者は仕掛けに気付きもせず、完璧に狙ったタイミングで起動する事が出来ましたわ!」

「どこの世界に、見合いの席で相手に罠を仕掛ける大馬鹿がいると言うのだ! しかも、かように大掛かりなものを! わしの顔に泥を塗る気か!」

 父君、この世界にいます……とは口が裂けても言える雰囲気でないので、ボクは素直に黙っています。もとより、ボクの姿は契約者であるサリアにしか見えないので言った所で、という話ではありますが。

 付け加えると、サリアの作った仕掛け≠ニいうのは――お見合い相手のヨシュアという貴族が席に着く瞬間、会場となった大広間の壁一面から色とりどりの火花が吹き出し、照明器具が一斉に花束へ姿を変え、天井に仕掛けられていたらしい花弁が大きな机に積もり『歓迎 ヨシュア殿』という文字を描いた――という、サーカスの手品かとでも言わんばかりの大掛かりなものでした。恐ろしいことに、この仕掛けは壁の火花以外一切魔法の力に頼らず、計算と工夫で成し遂げたものだということです。

 サリア最大の特技が、罠作りです。おおよそ皇女らしくないこの特技は、元々は多忙なマデラ?(おとうさん)の興味を惹くために始めた悪戯が切っ掛けだったようですが、いつの間にやら精度を異様に高め、この水準にまで達してしまったようです。ボクもしばしばこの罠の餌食になります。育った環境が環境だったために、寂しさの裏返しとはいえ、困った特技には違いありませんでした。

「まあ、罠とは人聞きの悪い。危害は一切及ばぬよう綿密に仕掛けましたし、演出も明るく華やかなものだったと自負しています。現に、ヨシュア殿は笑っておられましたわ!」

「大馬鹿が、お前には笑いと苦笑いの違いもわからんのか!」

 当然ながら、この仕掛けを突然目の当たりにしたヨシュアとその従者たちは大変に驚いた様子でした。噂にはサリアの罠好きを聞いていたようですが、実際にその異様な光景を目の当たりにすれば、予備知識が如何程役に立つのでしょうか。

「そもそも、私にはまだ見合いなど早すぎるのです! 父上がどうしてもと仰いますから!」

「なるほど、つまりわしへの当て付けであのような馬鹿げた真似をしたというのだな?」

「そ、そんなつもりでは……

 だんだんサリアの声が小さくなっていきます。無理もありません、いくら皇女といってもサリアはまだまだ少女。威厳ある皇帝の凄味に当てられながら、むしろ善戦した方だとボクは思います。

 一方、マデラ?世は娘の退転に気付いたのでしょう。彼女に背を向け、止めの一言を言い放ちました。

「とにかく。常識がないのは面倒を見てやれんかったわしにも原因があるかもしれん。だがなサリアよ、そのように物の理を、人心を理解できぬ者に、わしは皇位を譲る事は出来ん。お前はまだ、人の上に立つ器ではない。自分自身すら容れ切れぬ器に、マルテスタ十億の民を注ぐわけにはいかぬ」

「…………っ!」

 その言葉で、サリアは完全に凍りつきました。皇帝はそのまま振り返ることなく、露台から去っていきました。

 夕風が、サリアの華やかな巻き髪を力なく揺らしました。

 

 

 

 それから暫く、サリアはその場を動きませんでした。次第に日が低い場所に移動し、やがて見えなくなります。サリアの心情を汲んでボクも何も言わずに傍で黙っていたのですが、夕風が夜風に変わる頃、痺れを切らしてサリアに呼びかけます。

「ねぇ、サリア。ショックなのはわかるけど、一度部屋に戻ろう。いつまでもこんな場所にいたら、風邪ひいちゃうよ」

 サリアは動きません。ボクは再びため息を漏らしました。本来なら契約者の体調管理もボクの役割なのですが、なかなかこのサリアという少女、ボクの思うようには動いてはくれません。とある存在≠ネらこんな時、相棒にどんな言葉を掛けるのでしょうか。経験不足なボクには見当もつきません。

「……ケーア」

 などと考えていると、サリアの方からボクに声を掛けてきました。今日初めての呼びかけです。もっとも、この状況になる前は他の者に囲まれる状況続きだったので無理もありませんが。とにかく、ボクはサリアの言葉に耳を傾けます。

「私は、皇女失格なのでしょうか……」

 聞く姿勢になったものの、サリアの発した言葉はそれだけでした。俯き加減のまま、掠れた声を絞り出しています。

「何でそう思うの? 父君に怒られたから、かい?」

「私には人心がわかっていない、父上はそう仰言(おっしゃ)いましたわ。恐らく、その通りなのでしょう。私に皇族としての職責は務まらない……ケーア、貴方もそう思いますの?」

 なるほど。ボクはサリアの悩みの種が何であるか、ようやく理解しました。サリアは自身の未熟さ≠ノ非常に敏感です。それは皇族としての責任を理解し、それらしい姿であろうとする思いと繋がるものがあります。それ故、叱責の内容以上に、『人の上に立つ器でない』という皇帝の言葉がショックだったのでしょう。

「んー……ボクは皇族じゃないし、そういうのはあまりわからないんだけど。でも一つだけ言えることはあるよ?」

「…………?」

 サリアが顔を上げます。涙で潤んだ瞳を、逸らすことなくしっかりとボクに向けました。

「この数ヶ月、君は魔法少女としてボクと人助けをしてきた。その時に、何人かに『ありがとう』の言葉を貰う機会があったよね。その気持ちに、裏側があったと思うかい?」

「……ない、と思います」

 三ヶ月前の初陣で人助けの喜びを知ったサリアは、以来お忍びで街に出ては困った人を探し、助けてきました。いくら平和な国でも、困ることがないかといえばそんな事はありえないのです。魔法を使ったことも使わなかったこともありましたが、その小さな人助けは確実にサリアを良い方向に導いているとボクは感じていました。

「そう。確かに君は人を思い、人のために動いていた。その思いは助けた人たちにも伝わったはずだ。そりゃ大ベテランの父君に比べれば君は未熟だろうし、人の心なんて難しいことはボクにだってわからないけど。大事なのって、そういうことなんじゃないかな」

「……ケーア……」

 再び、サリアが視線を落としました。あれ……もしかして、いまの話は失敗……だったんでしょうか。

 不安を抱くボクをよそに、サリアは服の袖でごしごしと目を擦り、また顔を上げました。その表情が先程までのそれではなく、笑顔になっていたことで、ようやくボクの不安も吹き飛びました。

「ケーア……明日は城下町へ行きますわよ。私は、私に出来ることをやりますわ!」

 よかった、いつものサリアです。まだ目は潤んでいましたが、この笑顔、そして真っ直ぐさはサリア特有の良さであると言えるでしょう。

「その意気だ、サリア! サリアにはサリアのやり方がある、それを父君に見せつけてやろう! サリアの良さが生かせれば、きっと見返せるよ!」

 そう、やがては彼女も名君と呼ばれる存在に……魔法少女としての活躍はもちろんボクの大望ですが、そんなサリアの未来を想像するのは悪い気がしません。なんといっても、唯一無二のボクの相棒なのですから。

「私の良さとは……はっ! 仕掛け作りの技術の事ですわね!?

「違う。確かに凄い技術なのに違いはないけど、断じて違う」

 訂正。名君より、名工という肩書きの方がサリアには相応しいのかも知れません。遊園地やお化け屋敷(モンスター・ハウス)を手がけると面白いものを作れそうです……あれ、天職……

 

 

 

 翌日。とても陽光の眩しい、お忍び日和です。サリアは無地のワンピースに革製の手提げ鞄、質素な麦わら帽子という目立たない格好で、城下町を歩いていました。美しい髪は後頭部で一つに束ね、左肩に乗せて胸元へ垂らしていました。庶民と何ら変わりない、しかしサリアの魅力が十分に伝わる格好です。

「うーん……やはり、外の空気は心地よいですわね!」

 安らぎ切った表情と声色で、サリアが穏やかに言いました。ボクは頷きつつ、きっと穏やかではない皇居の様子を思い苦笑しました。今日のこのお忍びは皇帝の許可を取った正式なものではなく、城をこっそり抜け出して今に至ります。城下町を歩いて早数時間。そろそろサリアの姿が見えないことに気付く者がいてもおかしくありません。

「ねえサリア、目的忘れてない?」

「もちろん覚えていますわ。でも、こうして町を見廻っていても、今日は何一つ問題らしき点が見当たりませんもの。いくら人助けをしようと思っても、助ける人がいないのではどうしようもありませんわ」

 確かにその通りです。元々、それこそがボクの目標達成における困難の、最大要因。確かに困ったことがゼロになるわけではありませんが、それでも元来平和なこの国で、問題が起こる可能性は相対的に低くなります。

「まあ人助けすらすることがないなら、それはそれで素敵な事ではありませんこと? ……ああ、ケーア。今日もそこのお店で昼食を摂りましょう。私、お腹が空きましたわ」

 サリア自身気付いているかどうかわかりませんが、この平和への認識を聞いて、ボクはサリアという人間が少しずつ成長していることを感じていました。出会った当初のサリアはもっと自分の事でいっぱいいっぱいだったように感じます。

 心が成長中であるなら、体もまた発達段階。食事は大切です。ボクは頷き、道沿いにあるオープンカフェへと向かうサリアに行動を委ねました。

 

 

 

 野外に設営された席には、昼前という時間もあってか多くの人が座っています。空いている箇所に腰掛けると、店の制服を来たおさげ髪の少女がすぐに寄ってきました。

「あ、サリア様! いらっしゃいませ!」

「しーっ! 声が大きいですわ、一応お忍びの身なのですわよ」

「あ、すみません……」

 人助けの過程で城下町の人々と関わる機会が増えたサリアは、お忍びといえど正体に気付かれてしまう事も増えました。多くはサリアの状況を察して行動してくれるので問題らしい問題もないのですが、やはり人目が気になるようになると楽しみ方も変わってきてしまいます。当のサリアはまださほど気にしていないようですが。

「べ、別に責めているわけではなくてよ! それより、いつものをお願いしますわ」

「かしこまりました!」

 注文(オーダー)を受けた少女が、おさげを揺らしながらぱたぱたと走っていきます。サリアより年下に見える、幼さの残る少女。父を手伝ってこの店で働くこの彼女は、サリアが魔法少女になって初めて助けた、いわば今のサリアになるきっかけをくれた少女です。町のカフェで偶然再会して以来、サリアはお忍びの度にこの店へ足を運ぶようになりました。

「ふふふ。庶民の生活というのも悪くありませんわね、ケーア?」

「サリアも、皇族って身分より庶民(こっち)の方が良かった?」

「まさか! 私はマルテスタ皇族であることに誇りを持っていますわ!」

 サリアは胸を張り、堂々とした態度で答えました。こういう所は出逢った頃から変わりません。

「それより、ケーアのいた世界の話をまだ聞いたことありませんでしたわね。どういった所でしたの?」

「『リペルラッド』のこと?そうだなぁ――」

「お待たせしました! (むらさき)(いちご)のチーズタルトです!」

 昔話は開始を待たず、やってきた少女と美味しそうな香りで中断することになりました。聞いた当人の意識がそちらに行ってしまったのですから仕方ありません。またの機会にするとしましょう。それにしても、ボクらの世界では紫色の苺なんて見たことがありません。その世界における独特の食材を見るのは楽しいです。

 毒々しい色合いのタルトを口に運ぶサリアの表情はとても嬉しそうでした。色はともかく、味はとても甘くて美味しいのだとか。ちなみに他人から姿の見えないボクは食べるわけにもいかない(何もない空中に消えていくように見えるのです)ので、その様子を羨ましげに見ていることしか出来ませんでした。

 

 

 

 暫くして。食べ終わったサリアは少女を呼び、会計を済ませます。チップまで渡すその姿からは、数ヶ月前まで身の回りのことさえ出来なかった(というよりしなかった)彼女の姿は想像できませんでした。成長でしょうか。やってることは常識なんですけどね。

「ところで。町に何か変わったことや、困っている様子の人はいませんこと?」

「うーん……ここの所は特に、ですね……あ。もしかして、また人助けですか?」

「い、いえ! 民の言葉を聞くのも、皇女として当然の努めですわ!」

 サリアが慌てて取り繕うと、少女はくすっと笑いました。一応、サリアが魔法少女として人助けをしているのは秘密ということになっているのです。尤も、良くも悪くも真っ直ぐなサリアは嘘も演技も下手なので、殆どの場合すぐにバレてしまっているようですが。

「と、とにかく。些細なことでも構いませんわ、気になる事があればすぐに私に知らせて下さいませ」

 サリアの言葉に少女は頷き、それから少し考える素振りを見せました。その内容は、直後に彼女の口から明かされます。

「そういえば……今日はお父さん、マグモット山にまで食材調達に出掛けてるんですよ。紫苺の在庫が少なくなってきたので。昼前には帰ってくるって言ってたんですが、ちょっと遅いですね」

 張り切って収穫してるんでしょうか。少女はそう付け加えて笑いました。ボクとサリアは顔を見合わせましたが、少女の様子に心配は見られません。きっとよくあることなのだろうと、特に危機感は抱いていませんでした。

 

 

 

 結局この日、これといった問題を見つけることは出来ませんでした。あまり城を空けすぎると憲兵が町に捜索に来て面倒事になると、ボクらは城に戻ることにしました。

「ふぅ……なかなか困っている人が見つかりませんわね」

「まあ、平和だって事はとてもいい事なんだけどね」

 時折魔法の力を少しだけ使いながら、ボクらはこっそり自室へと戻ります。途中で兵士に出会う事もなく、無事に戻ることに成功すると、二人揃って安堵の息を吐きました。部屋前にサリアを探す給仕がうろついていないところを見ると、どうやら抜け出したこと自体がバレていなかったようです。

「何だか味気ありませんわね。時間稼ぎのため部屋の周辺廊下に幾つか仕掛けを作ってあったというのに、無駄になりましたわ」

 さらっととんでもないことを言ってのけるサリア。昨日その仕掛けが原因で怒られたというのに、懲りないものです。あと、ずっとサリアの肩の上に乗っていてよかったです。本当によかったです。もし部屋に戻るときサリアの後ろをついて走っていたなら、きっとボクは今頃その罠の餌食になっていた事でしょう。

 問い質したい事はあるものの、しかし今ボクの関心は他の事にありました。ボクは小さな体をサリアの前に置き、尋ねます。

「ねえ、それにしても人が少なすぎた気がしない?」

 サリアも真面目な表情で頷いてみせました。どうやら同じことを気にしていたようです。

 いくら兵士の目を潜るようなルート(城の上空すら含みます)で行動したとはいえ、巡回兵にもサリアの抜け出しを警戒していつも部屋近くに立っている給仕も、今日は見当たりませんでした。決して狭くもない城内、これはどうも不自然です。

「何か、あったのでしょうか……」

 ようやく下ろしたばかりの腰を持ち上げながら、落ち着かない様子で居るサリア。しかしその場から動くこともない彼女は、何を思っているのでしょうか。

「……父君に、聞いてみる?」

 サリアの肩が小さく跳ね上がりました。しばらく複雑な表情で黙っていたサリアでしたが、ようやく意を決したのか、ほんの小さく頷きました。

 

 

 

 城内で最も深部に位置する大部屋、玉座の間。執政中、皇帝はいつもこの部屋にいます。そこへ向かうにつれ、豪華になっていく壁の装飾に比例し、兵士を見かける事が多くなっていきました。それでも、いつもの人数に比べれば少ない方です。皇帝と国を繋ぐパイプとなるこの廊下には、いつも絶えず兵士や文官たちが忙しそうに行き来しているのです。

 サリアは途中で何人かの兵士に声を掛け、何かあったのかと尋ねましたが、

「はっ、サリア様。失礼ながら急ぐ身でありますので、失礼させて頂きます」

「サリア様、皇帝陛下は玉座の間におられます。直接聞かれた方が早いでしょう」

「武器や防具は持っているだけでなく、ちゃんと装備しないと効果が発揮されませんぞ!」

 返ってきた答えは、どれもこのようなものでした。何だか一人妙な答えを返した人がいたような気がしますが、きっと気のせいでしょう。考えないことにします。

 行き交う兵士たちは、誰もが忙しく走り回っていました。サリアに情報を教える時間が惜しいのか、情報を規制されているのか。それを知り得る術がボクらにはありませんでしたが、やはり皇帝に直接問うしかないようです。

 玉座の間の扉は開け放たれており、廊下からも皇帝の姿がよく見えました。サリアは途中から駆け足で、一直線に敷かれた長い赤絨毯(レッド・カーペット)を駆け抜け、玉座の前まで躍り出ました。

「……サリア。このような所へ、何をしに来た?」

 隣に控えた大臣と真剣な表情で話していた皇帝マデラ?世は、突然現れた娘に冷たい眼差しと言葉を投げかけました。昨日の今日で、まだ機嫌が直っていないのでしょうか。

「城の様子がおかしいので、何かが起こったのではないか、と考えたのです。案の定、兵士たちの様子、この深刻な空気……何もないとは考えられません。父上、何かあったのでしょう?」

「ほう……」

 対するサリアは一瞬びくりと怯んだ様子を見せたものの、臆することなくすぐに言葉を返しました。皇帝は少しの間、表情を変えず視線を注ぎ続けていましたが、やがて顎鬚の逞しい口元を動かし、言いました。

「よかろう。いままで他に興味を示すことのなかったお前が、異変に気付いたというのは評価に値する。少しだけ認識を改めよう」

 サリアの表情から不安が消えました。褒められたのが単純に嬉しかったのでしょう。その様子をしっかり見届ける間もなく、皇帝は言葉を続けます。

「よいか、一度しか言わぬぞ――今日の昼頃だ、郊外にあるマグモット山で大規模な山火事が発生した。詳しい原因はまだはっきりしておらんが、学者の言うことには、近頃暑く乾いた日が続いたのが原因では、ということだそうだ。現在、兵士たちを動員して消火活動にあたらせている所だ」

 ボクは一度喜びに緩んだサリアの表情が、再び引きつっていくのを真横で見ました。ちょうどボクらが街に出ている間に、そんな事が起こっていたなんて。サリアのショックも想像に難くありません。

「……マグモット、山……?」

 ところが、サリアが固まった理由はボクの思っていたそれとは少々異なっていたようです。復唱された聞き覚えのある単語に、ボクもハッと息を呑みました。そう、町のオープンカフェで働いていたあの少女の父が、紫苺の採集に出掛けたという、あの山です。

 そういえば、あの少女は『父の帰りが遅い』と言っていました。山火事が起きたというのはちょうどその頃。当時既に帰路に就いていれば心配はないでしょうが、不安を拭うだけの材料が今は手元にありません。

「父上は……父上は、ここで何をされているんですの?」

 サリアの声は、体は、震えていました。

「救助兵の組織、文献調査、被害情報の収集……様々だ。お前もいずれ皇位を継げば、このような災害に出くわし、指揮を取らねばならぬ事もあろう。その気があるのならば、ここで私の動きをよく見ていくといいだろう」

「そういうことではないのです!!

 サリアが突然、声を荒げました。これには皇帝や周囲の臣下、さらにボクまでもが目を丸め、一様に驚きを隠せません。このようなサリアの姿を見たことが、かつてあったでしょうか。僅か数ヶ月の付き合いのボクですら、普段のサリアからは考えられない行動でした。

 初めて皇帝に対し優位を取ったサリアは、そのままの勢いで言葉を続けていきます。その様子も、先と同じく普段とは全く異なったものでした。

「確かに過去の資料から規模や対策を考えることは大切だと思いますわ。ですが、現場は郊外なのですよ! 追加の兵が移動する時間、報告や伝令に早馬を駆る時間、そういったものを考えれば、指揮は最前線で行うべきではないのですか? 恐らく混乱の最中(さなか)にあるであろう現場を鼓舞し、先導するのもまた上の立つものの使命ではないのでしょうか!?

 勢い良く最後まで言い切ったサリアは、大きく深呼吸をしました。慣れない大声を出したからか、肩で息をしています。額には汗が滲んでいました。

 あまりの剣幕に思わず気圧された形になっていた皇帝ですが、サリアが言葉を切った間に徐々に落ち着きを取り戻したのか、静かな口調で答えます。

「……お前の言っていることに、間違いはない。だが、青いな。皇帝たるもの、みだりに城を離れてはならぬのだ。今回の災害は確かに規模の大きいものだが、かといって離れている間にさらに大きな問題が起こらぬやも知れぬ。常に一歩引いた場所から、広い視野を持つのも大事なことなのだ、サリア」

「引くのが一歩にしては、この城は距離がありすぎますわ!」

 再び声を張り上げてサリアが反論します。昨日の露台における反論とは色の異なる、強い意志の込められた口調でした。

「父上の言いたいことはわかりました。ですが、やはり私には受け入れられません。現場の人々は、きっと誰もが必死です。今も辛い思いをしている人、一所懸命に事態収束へ取り組む人、多くいます。ならば、私も力になりたい。私が言った所で何が出来るかわかりません。それでも、私一人分の微力が合わされば、その僅かばかりだけでも早く収まるかも知れないのです!!

 再び深呼吸をすると、そのままサリアは(きびす)を返して玉座を後にします。残されたのは驚いた様子のまま固まる家臣たち、そして無言のままサリアを視線だけで見送る、父親の姿でした。

 

 

 

「ねえサリア、これからどうするの?」

 廊下を駆け抜けたサリアは、城から幾つか伸びる尖塔の一つを目指し、螺旋階段を上っていました。ボクが問いかけると、サリアは呆れたと言わんばかりの表情をこちらに向けます。

「まあケーア、愚問ですわよ。この流れならば当然、現場に向かう意外に有り得ないと思いませんこと?」

「ですよねー」

 先ほどの威勢はどこへやら、再びいつものサリアです。ボクが聞きたかったのはそういう事でなく、何故城門の方ではなく尖塔を目指しているのか……ということだったのですが。

 そうこうしているうちに階段を上りきり、尖塔の頂上へと到着しました。ここは見張り台としても使われる場所ですが、兵士が出払っているので今は閑散としています。

「あー、なるほど……」

 この高さからならば、マグモット山の様子がよく見えます。山のあちらこちらから黒い煙を吹き出し、時折赤色も織り交ぜながら、日の沈みかけた空へと立ち上らせています。遠目からでも、どういう状況にあるのかは容易に創造出来ました。

「さあケーア、行きますわよ!」

「え? 行くって……?」

 答えを聞く前に、サリアはボクの尻尾を掴むと、尖塔から乗り出し、身を投げました。激しい風が走り抜け、サリアの髪と掴まれたボクを強くなびかせました。

「し、尻尾はやめて!!

「緊急時です、諦めになって。さあ、行きますわよ!!

 言いながら、サリアは開いた右手をピンと伸ばします。直後、サリアの周囲には眩い金色の光が溢れ出しました。

 

 空中で錐揉み落下していくサリアを、金色の光粒が無数に取り囲み、渦巻きます。サリアのウインクに合わせてそれは体へとまとわりつき、同時に着ていた服は無数に伸びる虹色の糸へと解け、風の中に溶けていきました。その間、サリアの身体はまとわりついた金色で輝くシルエットと化し、服がなくなったことによる不都合≠カバーしています。これは肉体の強化≠ノ伴って起こる現象で、視覚上の効果はたまたま得られたものです。大事なので繰り返しますが、たまたまです。

 元々の衣類が一切解け切ると、すぐに何処からか現れた純白の線が無数絡み合い、輝く絹糸となってサリアの体の周りで編み上がっていきます。腕には肘までを覆う上品な手袋、足には白鳥を模した飾りが付いた靴が、そして胴体にはフリルと宝石が豪勢に配された絢爛華美なドレスが、次々と形成されていきました。この衣装はボクの手作り(ハンド・メイド)。猫に似た姿の妖精であるボクがこの服をどう編み上げ、保管してあるのかはシークレットです。

 今、追いかけるように降ってきた一本のプリティなステッキが、サリアの手にしっかりと収まりました。その先端にあしらわれた大きな星飾りが強く輝きを放ち、同時に全身にまとわりついた金色の光が弾けて爆発します。光が収まったとき、そこには純白のドレスと杖を備えた、気高き皇女の姿がありました。

 これが魔法少女の『変身』と呼ばれる行動です。別にこれを行わずとも、魔法は行使できますが、するのとしないのとではその性能に違いが出てくるのです。何より、魔法少女は活躍の前に変身するものと相場が決まっているのです。補助妖精は形にとても拘る生き物です。ちなみに変身は描写こそ長いものの、実際には瞬きするより早く全てが完了しています。

「困窮せし民救うため、立ち上がりし純白の彗星――魔法少女サリア、いざ参る!!

 一旦空中で決めポーズと決め台詞を格好良く決めた後(これも重要です。最近ようやく自発的にやってくれるようになりました)、少し赤面しながらサリアは両腕を伸ばしました。落下するばかりだった体がふわりと浮き、空中で静止します。数ヶ月を経て、ようやくまともに身に付いた浮遊術でした。

「さあ、飛ばしていきますわよ!」

 ボクの返事も待たず、サリアは超高速で目的地に向けて弾丸飛行を始めました。その姿、まさに純白の彗星。ところで、風圧でボクの体がちぎれそうなほど伸びている事に……早く……気付いて……

 

 

 

 本気を出した魔法少女の力にかかれば、城から現場までの距離などあっという間でした。ただし急制動の衝撃波で近場の木々がなぎ倒され、人が数人吹っ飛んだのは内緒の話です。幸い怪我人はいなかったようなので、問題はありません。たぶん。

「これは……ひどい……」

 現場に着いたサリアは、できるだけ人目につかない場所からその様子を覗っていました。

 ごうごうと燃え盛る炎は、麓の山道にまで伸びています。集まった人々や送られた兵たちによって消化活動が行われていましたが、炎の勢いは弱まることを知らないようでした。

「確かに凄いね……サリア、これどうやって片付ける?」

「えっと……大魔法で山ごと全部吹き飛ばす、というのは……さすがに不味いですわよね」

 最初の発想がまずおかしすぎます。しかし、以前溺れている少女のために河を吹き飛ばしたという前科があるので、本当にやりかねません。

「それやると、山の中に取り残された人がいたら御終いだよ」

「でしたら、まず山中を飛び回って取り残された人を救出しましょう! 私ならきっと出来ます」

「いや……さすがにこの山を一人で探し尽くすのは無茶だ。空を飛ぶのも、まだ高精度とは言えないし」

「う……」

 ほんの僅か前ですら、着陸の際に被害を出しています。人に接近することを考えれば、賢明な判断であるとは言い切れません。かといって陸を駆けるのはなおのこと、いくら速く動けても山全てを回るのはまず不可能です。

「どうしましょう……」

 サリアの顔に焦りが滲みます。威勢良く飛び出してきたものの、結局やるべきことを見出せずにいる。消火活動に関しても統制は取れているので、サリアが出ていくことに必要性がありません。これではわざわざ前線に出向いても、皇帝以上の働きが出来るとは考え難いでしょう。

「結局、私には……私には、何も……?」

 サリアの瞳に涙が滲みます。

 実は、ボクには一つだけ思いつく手段がありました。ただ、サリアの力量ではまだ非常に難しい魔法を使う手段です。成功しなければ無駄にサリアを力尽きさせてしまう、ハイリスクな手段でした。

 故に、話すかどうか悩みました。でも、彼女はボクと契約した魔法少女で、人助けに強い信念を持っています。打てるかも知れない手があるのに、それを教えないのは、とても悪いことのように感じました。

「……ねえ、サリア。一つ、方法があるよ」

 ボクの言葉に、サリアは強い気持ちを込めて眼差しを送ってきます。意を決し、ボクはその手段についてサリアに説明しました。

「……私に、出来るでしょうか……」

 説明を受けたサリアは、今度はやや伏し目がちになってしまいました。元々、サリアはこちらの自信のなさの方が目立つ性格で、先ほどのように「出来る!」と豪語する方が珍しいのです。

「無理だと思うなら仕方ない。他の方法を考えよう」

 ボクにとっても、自信のある作戦ではありません。失敗してサリアに倒れられてしまっても困ります。

 

「お父さん! お父さんが……まだ……!!

 

 刹那、ボクとサリアは同時に同方を向きました。そこには聞き覚えのある声で制止する兵士にすがりつく、見覚えのある少女の姿がありました。

「無理だ。この炎の中、山に入るなんて許可できない」

「だって! お父さんが、お父さんが……っ!」

 少女は膝を折り、その場に崩れ落ちます。同時に小さく呟かれた言葉を、強化されたサリアの聴覚は確かに聞き取りました。

 

――「助けて」、と。

 

「……ケーア、私……やりますわ」

 純白のドレスを纏った少女が、静かな声で言いました。対象は、ボク。彼女以外、ボクに話しかけられる人物はいません。

「そうでした。私は困窮せし民救うため、立ち上がりし*v@少女。やれるかやれないかではなく、やる。それが私……ですわ!」

 言い切ると、サリアは純白の裾をなびかせ、人々の前に躍り出ていきました。またボクの返事を聞いてはくれません。

 でも。

「……サリア。頑張って……!」

 そんな時の彼女は、いつも生き生きとした表情なのでした。

 

 

 

 人々の前に躍り出たサリア。その姿を見た者たちの間から、歓声が湧きます。

「おお、サリア様だ!」

「サリア様が来てくれたぞ!」

「ちっ違います! 私は通りすがりの正義の味方、『プリンセス・サリア』! 皇女サリアとは一切の関係がありませんわ!」

 慌てて弁解する正義の味方=Bもはや誰からもバレバレですが、一応正体は隠しています。魔法少女ってそういうものなんです……と、ボクが教えました。

「えー……ごほん」

 軽く咳払いをして、手にしたステッキを掲げます。ざわめいていた群衆もそれを見て静まりました。

「私は今から、火を消します……が、全部消しきれるかどうかは正直わかりませんわ。そこで、皆さんに協力をお願いしたいのです。残り火の始末、そして取り残された人々の救出を……!」

 その方法について触れなかったからか、一瞬民衆はポカンとした様子でいました。ですが、徐々に何を依頼されているのかを理解したのか、再び口々に歓声を上げる人々が増えていきました。

「……ありがとうございます。私、必ずやってみせますわ……!」

 自分を支持し、信じてくれる民のために。笑顔をその場に残して、魔法少女は天高く、飛び上がったのでした。純白の軌跡を残して飛ぶその姿は、彗星が地上から伸びていくかの如く様相でした。

 

 

 

 災害現場に救護兵が拵えた、仮説テント。怪我人を収容しているその仮施設の中で、サリアは目を覚ましました。

「やあサリア、気がついたかい?」

「ケーア……どう、なりましたの?」

 問いかけられたボクは、言葉でなく尻尾を使ってテントの外を示しました。サリアは頭だけ向きを変え、そちらに視線を送ります。

 少し隙間のある出入り口。その隙間から聞こえてくるのは、草木を叩く、雫の音。焼けた土を潤す、水の音。しとしとと降り注ぐ、優しい雨の音でした。

「雨……ということは、私、やったんですわね?」

「うん、見事だったよ」

 ボクはにっこりと、できる限りで最高の笑顔をサリアに向けました。それを見届けると、サリアは安心した様子で、再び瞼を閉じていきました。

 

 ボクの作戦。それは、サリアの魔力で巨大な雲を作り出し、山全域に雨を降らせる……というものでした。これは皇帝が調べさせた情報『乾燥と高温が原因の発火』という所にヒントを得たものです。

 一見単純そうですが、山一つほどを覆う雲を作り出し、大量の雨まで降らせようと思うと、とても膨大な魔力が必要となるのです。正直、出来るかどうかも怪しいレベルの方法でしたが、サリアは見事やりとげて見せました。ボク自身、彼女の力量を見誤っていた……いや、この場合は流石だと褒めてあげるべきなのでしょうか。っそれはそれは立派な姿でした。

 ところで、サリアは気付かなかったようですが、ボクがテントの外に存在すると示したものは、彼女の成功を意味する雨だけではありませんでした。

「いつの間に、これほど民衆に慕われるようになっていようとはな。共に歩むその姿勢と行動も、見せてもらった。何があったのか知らぬが、確実に成長している……そういうことか。生意気をいうのも納得だわい……」

 数人の近衛兵を従えた(いかめ)しい顎鬚の男が、テントの布越しに娘の姿を見ていました。その表情は厳しい顔つきに似合わぬ優しさを湛え、そしてどこか寂しそうでもありました。

「お前はまだまだ、マルテスタ十億の民を容れる大皿にはなれない。だが、お前の(いれもの)は……そう、杯のように繊細で、美しい」

 そして、誇らしげでもありました。

 

 しとしと、雨が降り続きます。徐々に弱くなりつつあるこの雨は、直に上がるでしょう。そうすれば、また綺麗に日が出ます。勿論、夜明けの後という条件もつきますけれど。

 

*****

 

 さて、いかがだったでしょうか。今回のお話はここまでです。

 雨を降らせることに成功したサリアによって、山火事は少しずつ小さくなっていきました。また、その後の懸命な消防活動によって火は完全に消し止められます。幸いなことに、逃げ遅れた人々もみんな無事に帰還することができ、あのカフェで働く少女も父親と再開を果たせたそうです。

 

 今回の出来事は、サリアと皇帝マデラ?世の関係をほんの少しだけ変えました。世間知らずの娘としか思われていなかったサリアも、この日を境に少しずつですが父に認められるようになったそうな。

 

 また、魔法少女であることが皇帝にまで知られてしまったことでまたひと悶着もふた悶着も起こることになるのですが、それはまた別の話。機会があれば、いずれお話することもあるかも知れません。

 

 ところで余談ですが、冒頭でサリアとお見合いをした貴族のヨシュア氏は、あの衝撃の悪戯をきっかけにかえってサリアをもっと知りたいと思うようになった様子。この後、多くアプローチを掛けるようになります。

 まだ婚約など先のことであると考えるサリアは、言い寄るヨシュアと逆に距離を取りたがるようになり、より多くの、そしてより凶悪な仕掛け≠フ数々に嵌めようとしました。その結果、サリアはまたしても皇帝にこっぴどく怒られることとなったのでした。

 

 

魔法皇女プリンセス?サリア りたーんず! …fin.

 

inserted by FC2 system